2025年7月末、東証グロース市場に上場していたAIベンチャー・オルツ(Alt)が民事再生法を申請し、8月末に上場廃止となることが決まりました。
「AIバブルの象徴」と言われた企業が、なぜ短期間で転落したのか。そして、投資家や起業家はここから何を学ぶべきなのでしょうか。
1章|オルツ急転落の背景
オルツ(Alt)は、AI議事録サービス「AI GIJIROKU」を中心に、音声認識や自然言語処理を活用したサービスを展開するスタートアップでした。
2024年10月に東証グロース市場へ新規上場し、生成AIブームの追い風を受けて初値は公開価格を大きく上回りました。
上場直後には時価総額が一時300億円に達し、日本発のAIユニコーン候補とまで言われました。
しかし、その華やかな成長の裏で、資金繰りの悪化と会計処理の問題が進行していました。
2025年春、内部告発をきっかけに第三者委員会が調査に入り、過去の売上の累計約119億円が過大計上されていたことが判明します。
実態としては未成約や未収金を売上として計上しており、帳簿上は黒字でも現金は不足していました。
上場資金を元手に急激な人員拡大や広告投資を進めた結果、固定費が膨らみ、少しでも売上計画が崩れれば資金が回らなくなる構造になっていました。
2025年7月30日、ついに東京地裁へ民事再生法を申請。
負債総額は約24億円と発表され、上場からわずか10か月での破綻は市場に大きな衝撃を与えました。
背景には、生成AIブームによる過熱感もありました。
日本ではAIベンチャーが次々と上場を果たし、実際の収益力よりも「AI企業であること」そのものが株価を押し上げる状態になっていました。
オルツはまさにその象徴であり、過熱した期待が一気に崩れた事例です。

私もこのニュースを見て、話題性やトレンドに頼った企業の脆さを痛感しました。自分も、仮想通過が出始めの頃、あらゆるコインに飛びついて失敗していました(笑)
2章|投資家が学ぶべき教訓
オルツの急転落は、投資家にとっていくつかの重要な教訓を示しています。
短期間での上場から破綻に至る過程は、投資判断のあり方を見直すきっかけとなります。
まず意識したいのは、IPO直後の話題株に飛びつくリスクです。
新規上場株は市場の期待で大きく値を上げる一方で、実績の裏付けはまだ十分ではありません。
特にグロース市場は、成長性を重視する一方で情報開示の精度がまちまちで、財務や内部統制が整っていない企業も少なくありません。
話題やテーマ性だけで株を買うのは、宝くじに近い行為といえます。
次に重要なのは、売上だけでなく現金の流れを確認することです。
損益計算書だけを見ると黒字に見えても、実際の現金が足りなければ会社は続きません。
フリーキャッシュフローが継続的にマイナスの場合、帳簿上の利益は「見せかけ」の可能性があるため注意が必要です(まあ今回は不正会計をしていたため、投資家をだましていたという、かなり悪質な行為ではありますが。)。
また、テーマ株の過熱には冷静さが欠かせません。
生成AIブームのような大きな潮流は、投資家心理を強く揺さぶります。
しかし「AI」という言葉だけで過剰評価されるケースは珍しくなく、事業モデルの再現性や実際の収益力を自分で検証することが欠かせません。
短期的な利益を狙うならトレンド株への参入も戦略の一つですが、中長期の資産形成を目指すなら、業績と現金の裏付けを徹底的に確認する習慣が身を守ります。

私も投資経験を振り返ると、話題性に流されそうになる瞬間があります。結局は地味でも堅実な企業が最後に笑うというのが、株式市場の現実だと改めて感じました。
3章|企業側が避けるべき失敗
オルツの破綻は、投資家だけでなく、起業家や経営者にとっても貴重な教訓となります。
急成長を狙うスタートアップが陥りやすい落とし穴が、今回の事例にはいくつも見えてきます。
まず一つ目は、短期の資金調達に頼りすぎることです。
オルツは上場による調達資金をもとに人材採用や広告投資を一気に拡大しましたが、売上が想定どおりに伸びなかったことで資金繰りが急速に悪化しました。
短期資金に頼った事業拡大は、景気や投資家心理の変化に弱く、一度つまずくと転落は早いものです。
二つ目は、期待を煽りすぎるリスクです。
生成AIという話題性に支えられたオルツは、市場やメディアに対して「急成長するAIベンチャー」というイメージを強く打ち出しました。
しかし、過度に高められた期待は、わずかな不振や不正発覚でも信用を一気に失う結果につながります。短期間での急成長よりも、着実な信頼構築こそが長期的な成功に必要です。
三つ目は、内部統制と会計の整備不足です。
スタートアップはスピードを優先するあまり、社内体制が追いつかないことが多くあります。
オルツも、内部管理やガバナンスの不備が売上の過大計上という深刻な問題に直結しました。
上場前後の段階から、会計や内部統制を固めておくことは必須です。
起業家にとって、今回の事例は「信用を失うスピードの怖さ」を示す典型例でもあります。
築くには何年もかかる信用が、たった一度の不正や不手際で一瞬にして消え去ることを忘れてはいけません。

私も事業を運営する立場として、このニュースには背筋が伸びました。短期の派手さや数字よりも、地道な信頼の積み重ねが長く事業を続ける唯一の道だと感じます。
4章|次に生かすために投資家・起業家が取るべき行動
オルツの破綻は、市場に大きな衝撃を与えるだけでなく、投資家と起業家の双方に明確な行動指針を示しています。単なる反省にとどめず、次の一歩につなげることが大切です。
投資家がまず意識すべきは、現金の流れを重視する姿勢です。
損益計算書で黒字でも、実際の現金が減っている企業は危険信号です。
特に成長市場では、売上の過大計上や前倒し計上が起こりやすいため、営業キャッシュフローやフリーキャッシュフローの確認を習慣化することが、資産防衛につながります。
次に、上場直後の熱狂に距離を置くことです。
IPO株は話題性で値上がりしやすい一方、企業の実力がまだ十分に証明されていません。
上場後数か月の決算を見て、売上と現金の裏付けを確認してから投資するだけでも、リスクは大幅に下がります。
一方、起業家や経営者が取るべき行動は、透明性の確保と堅実な成長戦略です。
過剰な期待を煽らず、実力に見合った目標設定を行うことで、急激な信用失墜を防ぐことができます。
また、上場を目指す段階から内部統制と会計管理を固め、第三者の目で監査を受けられる体制を整えることが、長期的な信頼につながります。
今回の事例が示すのは、熱狂よりも堅実さが生き残りの鍵だということです。
投資家は冷静な数字の確認を怠らず、起業家は信用を第一に事業を組み立てることで、同じ轍を踏まない未来を築けます。

私自身も事業と投資を行う立場として、短期の熱狂に流されない大切さを改めて感じました。市場が盛り上がる時期こそ、足元を見直し、地道に信用を積み重ねていくことが一番のリスク回避になると思います。
まとめ|オルツ事件が教えてくれること
オルツの上場から破綻までのスピードは、現代のAIバブルの脆さを象徴する出来事でした。
投資家にとっては、話題性に飛びつかず、現金の流れを重視する冷静さが大切であることを再確認するきっかけとなります。
起業家にとっては、短期の派手な成長よりも、地道な信用構築と内部管理の徹底こそが事業を長く続ける唯一の道です。
市場は熱狂と冷静さがせめぎ合う場所です。短期的なブームに惑わされず、堅実さを選んだ者だけが次の成長局面を迎えられます。
この教訓を胸に、次に訪れるAIブームでも「勝ち残る側」に立ちたいものです。

私もこの事件を見て、地味でも堅実な歩みを大事にしようと改めて思いました。投資も経営も、信用を守ることが最大のリターンにつながります。
それでは最後まで読んでいただきましてありがとうございました!
冷静に、着実に資産を守って、増やしていきましょう!